重視されるべき「咬み合わせ」
歯科の治療の中で「咬み合わせ」が非常に重要な事は患者さんも歯科医師もわかっています。けれども、現在の歯科治療では咬み合わせまで丁寧にみることはなかなか行われていないのが現実です。
歯科治療について患者さんに説明する時によく言うことがあります。
歯が虫歯になったら完全に虫歯を除去して代替えの物を詰める。もし歯が無くなったらその場所に歯の代替えの物を作り、最後に咬み合わせを調整する。ただこれだけをすれば「歯科治療」として問題が無いとみなされています。
しかし実際の治療はそんなに単純な話ではありません。なぜなら人間はロボット機械ではないからです。
例えば、身体は脳からの信号で動いていますが、身体を動かす筋肉自体は人それぞれ違ってきますから、治療も当然複雑になってきます。咬み合わせと一口に言っても、さまざまな要因が関わっており、単純に調整できるものではありません。咬み合わせは、治療の最終段階に調整するようなものではなく、もっと重視されるべきものなのです。
咬み合わせは感覚で調整されている?
皆様もご経験があるかもしれませんが、被せ物の高さや、装着後の咬み合わせを調整する時に赤や青のリボン紙を咬みますね。そこで高いか低いかを歯科医師が患者さまに尋ねます。患者さんが「高いです」と答えれば削って調整をし、「大丈夫」と言えばそのままクラウンなどを装着するわけです。
しかしながらそこで問題なのは、治療の判断を患者さんの咬む感覚にほとんど頼り切ってしまっていることです。もちろん、歯科医師も専門知識と経験からこれで大丈夫だろうと判断するわけですが、患者さんの訴えは重視されます。
ただ、そこには何の根拠も科学的な背景もありませんので、言ってみれば、”感覚”で判断しているわけです。
咬み合わせ治療へのデジタル技術導入
治療した後に歯が割れる、矯正治療した後に顎がおかしい、虫歯がないのに歯がしみる等の症状を訴える患者さんが、近頃増えています。治療を行ったのにもかかわらず、「何かおかしい」という場合、その原因が咬み合わせからきていることがほとんどです。
最近は歯科のデジタル化が進み、こちらは非常に良い事ですが、治療の最後の咬み合わせというところではこのデジタル化が全く行われていません。咬み合わせが原因と考えられる問題がこれほど増えてきているのにもかかわらず、です。
名取歯科医院では、この「咬み合わせを整える」という段階にこそデジタル化が必要だと考えています。数値化されたデータに基づき治療を行い、咬むということを重視し、治療後のトラブルを防ぎます。
よく治療とはかけ算だと言われていまして、どこかの過程で0が出たら全てが崩れ去ります。このようにならない為にも、治療前のデジタルデータ管理はもちろん、治療の際にもデジタル機器を可能なかぎり投入し、根拠のある咬み合わせ治療をする事が大切になります。
DTPセラピーで使用するデジタル機器
1 T-scan system
非常に薄いセンサーを咬む事によって、どこの歯がどの位の力で、どの位の時間を咬んでいるのかを把握する機械です。この検査を1回行うことで患者さまの咬む力をデジタルデータとして記録する事が出来ます。左右の偏りやしっかり咬めていない部分を可視化し、感覚に頼らない咬み合わせ調整のガイドラインとします。
2 EMG system
人間は咀嚼する際にいくつかの筋肉を使っていますが、それらの筋肉の緊張具合や力のバランスを探ることで、咬み合わせのトラブルに関する原因の所在を見極めます。こちらの機械では、筋肉から発生している微弱な電流を検知し、どの筋肉がどのくらいの力で咬んでいるのかを確かめることができます。
3 JVA system
顎関節の軟骨の状態を「咬む振動」によって把握する機械です。顎関節症では、下顎の動きを支える関節円板とよばれる軟骨部分に問題があることが多くみられます。MRIを使用すれば関節円板の状態を確認することができますが、こちらの機械を使用することで、患者さんに負担をかけることなく顎関節の状態を探ることが可能です。
DTRセラピーとは、これらの機器を総合的に使い、あなたの咬み合わせを精密に把握する治療です。咬む位置や圧がかかる時間、そのバランスを正確に把握し、歯にかかる圧だけでなく、咬む際に使う顎の筋肉へも客観的な目を向けることで快適な咬み合わせを目指します。歯、筋肉、関節といった複数の要素が関わる咬み合わせを精査し、柔軟な治療を施すことでマウスピースでは解決できなかった顎関節症にも対応します。
DTRセラピーの可能性
また、インプラントのように感覚センサーとなる歯根膜が無い歯でも、このようなデジタル機器を使用すれば客観的かつ精密に咬む力を測定することができますので、インプラントのトラブル防止にもなります。このように、DTRセラピーは顎関節治療や咬み合わせ治療だけでなく、矯正治療やインプラント治療、クラウン設置時に効果的に利用することも可能です。
顎関節症の悩みや咬み合わせのトラブルを抱えている方、治療を試みたがなかなか改善されないとお悩みの方は、この治療法を使って「咬むことの根本」を見直していくことをお勧めします。
気になる方はぜひお問い合わせ下さい。