治療ステップ
初診時
歯を失った原因究明から始めます。歯ぎしり(ブラキシズム)の強い患者さんで他院で治療していたレジン(プラスチック)がすり減っていました。生活習慣(特に喫煙と食生活)の改善と歯ブラシ指導で基本に則った歯ブラシのお願いをお話ししました。
歯を失って噛み合っていない所が多く、金属やプラスチックの片減りで噛み合わせが乱れてたため、総合的な一口腔内(お口全体)の全顎治療をお話しました。
現状と治療計画
炎症を取り除くアプローチからはじめました。お口全体の虫歯を除去を根管治療(根の消毒)と共に行います。その際に長期間におよぶ治療で噛めるところを常に残す(作る)ことです。中高年世代は特に噛めないストレスで食事からの栄養を取り込めず、痩せたり免疫力がおちることが多いため、私は長期に渡る治療では噛めること、食べられることを念頭において治療計画を策定しています。
抜歯 右上8,7,6,4 / 右下1,6 / 左下6,7
エンド 右上 1,2,3 / 右下 7 / 左上2,3,5 /左下5
インプラント右上 4,6,7 /右下6 / 左下 6,7
ブリッジ 上3-3 / 左上4-7 / 下の 2-2
神経を最大限残す治療をご提案しました。歯の血液の流れを維持するために神経と血管を保つことが大切で安易に神経を抜くのは歯医者の横暴だと考えています。木に例えると枝に栄養がいかなくなると枯れ木になり、枯れ木はとても脆いことを患者さんご存じだとおもいます。
神経を取って血が流れなくなった歯は免疫が低下し、力のかかる奥歯の場合は根の破折にも繋がります。これは歯も枯れ木も同じ事です。よくセラミッククラウンの治療で被せた後に痛みがでるので、神経を取ることを薦める歯医者さんがいますがまったく逆です。治療した歯をできる限り大切に残すためにも、安易に神経を取ってはいけません。
根管治療による根尖病巣の改善
保険で治療していた左上5番の金属を外し虫歯を取りながら根管治療を行います。次回来院時にファイバーコア(土台)を築造して仮歯で組織を安定させます。患者さんが自覚してなかった根尖病巣が右上2番にあり、歯ぐきに膿の袋(フィステル)が露出している状態でした。ラバーダムと隔壁で治療中の感染を防止して、マイクロスコープによる拡大視野のもと根管を丁寧に消毒したあと、ファイバーコア(土台)を築造し仮歯で整えました。
右下6番は保存不可能な状態で根尖病巣があったため抜歯となりました。経過観察しながら組織の回復後にインプラントの予定です。こうした治療の間も食事が不便になせないように左側を噛めるように残しています。
奥歯の根管治療と抜歯処置
根幹治療を終えた前歯に仮歯を装着します。また虫歯が進んで根だけになっていたり、保存不可能な状態であった右上6,7,8番(大臼歯)を抜歯しました。
保存可能な右下7番(大臼歯)の金属の詰め物を取り外しマイクロスコープによる拡大視野のもと根管を丁寧に消毒し、ファイバーコア(土台)を築造し仮歯で整えました。
インプラント埋入と奥歯の根管治療
抜歯から5週間で骨を含む歯周組織が安定したことから、右下6番のインプラント埋入手術をおこないました。
並行して保存不可能な状態であった左下1右下1(前歯)を抜歯しました。目立つ前歯の隙間には仮歯を装着しました。保存可能な左下5番(小臼歯)の詰め物と台を取り外しマイクロスコープによる拡大視野のもと根管を丁寧に消毒して根管治療を終えました。
奥歯のインプラント治療とダイレクトボンディング
抜歯から5週間で骨を含む歯周組織が安定したことから、右上6,7番(大臼歯)のインプラント埋入(一次)手術をおこないます。6番は骨の厚さが足りない状態のためサイナスリフトを併用。同時に右上4番を抜歯しました。
さらに右下6番についてもインプラントの一次埋入手術をからから1ヶ月を経たことから上部インプラント(アバットメント)の装着とメタルボンドの被せ物で治療を終えました。
このように抜歯から骨と歯周組織の再生が必要な場合もあり、インプラントの抜歯即時埋入が適さないことがあるということは患者さんにも広く知って頂きたいとおもいます。
最初にお話ししたとおり、大きな治療やインプラント手術をおこなっても片側の咬合は保っていますので、治療中もしっかり食事を摂ることができます。このことは全身の免疫力の維持や食事ができることの心の安定につながり、治療予後をより良い方向に促します。
そのうえで、一次埋入したインプラントの経過観察中に、右下に残した天然歯から丁寧に虫歯を取り除き、自費治療用のレジンでダイレクトボンディングを行います。
前歯に仮歯を作成して正しい噛み合わせの誘導(癖づけ)と次の治療に向けた歯周組織の安定を促します。このようにお口のなかを分割して計画的に治療することが長期に渡るフルマウス(全顎)治療の大きなポイントになります。
インプラント手術と GBR (骨造成) 術
右側のインプラント治療、根管治療が終わって免疫力の改善もみられたことから、左下の奥歯(左下6番7番)のインプラント埋入に着手しました。
また骨量が不足していたため同時に GBR (骨造成) 術を行いました。メンブレンで軟組織の侵入を防ぎながら骨の再生を促す処置を同時におこないます。
約、1ヶ月後に経過観察をしていた右上4番にインプラントを埋入。これで上顎のインプラントの埋入をすべて終えました。
虫歯の除去とダイレクトボンディング修復
左側の前歯に進行していた側面の虫歯を丁寧に除去します。マイクロスコープで拡大して虫歯を取りきったことを確認したのち、自由診療用のレジンをダイレクトボンディングで充填します。
上顎左右の二次インプラント手術
インプラント埋入(一次手術)から年末を挟んで1ヶ月半が経過して骨の安定もはかられたことからインプラントの二次手術をそれぞれおこないます。インプラント2回法でこのようにインプラント本体が骨に安定して固定される期間を設けてから、土台(アバットメント)の装着をおこなう点が特徴です。
同様に右上4番に埋入したインプラントの安定を確認して、二次手術(土台)をそれぞれおこないました。約2かヶ月で土台(アバットメント)の装着とセラミックの歯(メタルボンドクラウン)による治療で審美性と機能性を両立したインプラントを終えました。
前歯の金属を除去、根管治療後にファイバーコアを築造
力の加わる奥歯の治療を終え前歯の治療します。右上1番のクラウン(被せ物)を外して金属の土台を取り除きます。
細菌感染を防ぐラバーダム防湿法を施した上で、マイクロスコープで拡大し丁寧に根管治療(歯の根の消毒)をおこないます。その上で根っこだけになっていたので MTA (根管治療用の覆髄材)で処置をしました。翌週、治療部位の安定を確かめてファイバーコアを築造して土台の作成まで終えました。
右上3番もクラウン(被せ物)を外して金属の土台を取り除き、根管治療の後、ファイバーコアを築造しました。同様に左側2番も治療を進めました。
約3か月で前歯を1本ずつ金属除去と根管治療を行い、根と歯ぐきのコンディション回復を確かめながら治療しました。また前歯の治療中は審美性に優れたプロビジョナル(仮歯)をつけることで、隙間が目立たないよう配慮します。
自然な印象の前歯とすめため歯ぐきを CTG (結合組織移植)手術
患者さんの頑張りで数年にわたって全顎全歯の歯科治療を進めてきました。機能的にも審美的にも大きく前進しましたが、左上の前歯の歯ぐきが痩せて退縮していました。そこでより自然な歯ぐきのラインと健康的な厚みを持たせるために CTG (Connective Tissue Graft , 結合組織移植)をおこないました。
口蓋(上顎の裏側)からドナーを採取して結合組織のみを歯ぐきの足りない部分に移植します。FGG(Free Gingival Graft,遊離歯肉移植)は、上皮性組織と結合性組織を移植しますが、CTG では結合性組織のみを移植するため仕上がりが自然で、前歯など審美性が最優先される部位に最適です。
セラミッククラウン(単冠・連結冠)の装着により全治療終了
前歯部分への CTG (歯ぐきの整形・移植手術) から2ヶ月が経過して、それまで進めてきたインプラント、根管治療用、歯周病治療の良好な経過を確認して、最後となるセラミッククラウン(白い被せ物)の治療を開始しました。
目立つ前歯は審美性を保つために、1本ずつ製作したジルコニアセラミッククラウンを連結(ブリッジ)作業します。始めからブリッジとして作ると安くできますが、形や清掃性に問題がでることがあります。今回は徹底して審美性と長期予後にこだわることを最優先したため、クラウンを後から繋げてブリッジとしました。これは同時に連結することで強度(応力)を高めてコアやその下の根っこへの力を分散させる役目も持たせています。前歯の上下は特にこうして手間隙をかけて調整します。
最後に左上奥ブロック、左下ブロック、右下ブロック、右上ブロックをそれぞれ2ヶ月をかめて順にセラミッククラウンで治療します。力の加わる奥歯にはジルコニアセラミッククラウンで強度と審美性を保ちました。
約3年に渡って患者さんご自身があきらめないお気持ちを持ち、生活習慣の改善を含んだお口のメンテナンスも率先して強力頂いたからこそ、全歯にわたる歯科治療を高い審美性を保って実現することができました。白い歯だけでなく、歯ぐきの形や色、そして噛み合わせの改善をプロビジョナル(仮歯)を使って丁寧におこない顎の痛みや違和感も改善しました。
歯医者だけが全力を尽くしても良い治療結果には繋がりません。このように患者さんの強い意志と努力による二人三脚で、歯科治療は成功に向かうことができ、そして長期予後につながります。
治療費
初診時 | ||
歯のクリーニング/PMTC | ¥10,800 | |
合計 | ¥10,800 |
根管治療による根尖病巣の改善 | |||
補綴・コア除去 | ¥21,600 | 1 | ¥21,600 |
根管治療(左上5) | ¥102,600 | ¥102,600 | |
根管治療(右上2) | ¥81,000 | ¥81,000 | |
ファイバーコア | ¥21,600 | 2 | ¥43,200 |
仮歯 | ¥5,400 | 8 | ¥43,200 |
抜歯(右下6) | ¥10,800 | ¥10,800 | |
処方 | ¥810 | 2 | ¥1,620 |
クリーニング | ¥5,400 | ¥5,400 | |
合計 | ¥309,420 |
奥歯の根管治療と抜歯処置 | |||
抜歯(右上6,7,8) | ¥10,800 | 3 | ¥32,400 |
仮歯 | ¥5,400 | 5 | ¥27,000 |
処方 | ¥810 | ¥810 | |
CT撮影・診断料 | ¥10,800 | ¥10,800 | |
根管治療(右下7) | ¥5,400 | ¥129,600 | |
ファイバーコア | ¥21,600 | ¥21,600 | |
合計 | ¥222,210 |
インプラント埋入と奥歯の根管治療 | |||
抜歯(左下1右下1) | ¥10,800 | 2 | ¥21,600 |
仮歯 | ¥5,400 | 3 | ¥16,200 |
インプラント(右下6番) | ¥5,400 | ¥216,000 | |
GBR(骨造成術) | 108,000 | ¥108,000 | |
処方 | ¥5,400 | ¥5,400 | |
補綴・コア除去 | ¥21,600 | ¥21,600 | |
根管治療(左下5) | ¥102,600 | ¥102,600 | 合計 | ¥491,400 |
ジルコニアクラウンの合着 | |||
インプラント(埋入手術) | ¥216,000 | 2 | ¥432,000 |
ジルコニアクラウン | ¥216,000 | 1 | ¥216,000 |
抜歯 (右上4) | ¥10,800 | 1 | ¥10,800 |
処方 | ¥5,400 | 1 | ¥5,400 |
インプラント+メタルボンドクラウン(右下6) | ¥216,000 | 1 | ¥216,000 |
ダイレクトボンディング(右下5) | ¥32,400 | 1 | ¥32,400 |
ダイレクトボンディング(右下3,4) | ¥27,000 | 2 | ¥54,000 |
仮歯 (右上2,3,4,5) | ¥5,400 | 4 | ¥21,600 |
仮歯 (右上1,左上1,2,3) | ¥216,000 | 4 | ¥21,600 |
合計 | ¥1,009,800 |
インプラント手術と GBR (骨造成) 術 | |||
インプラント(左下6,7) | ¥10,800 | 1 | ¥10,800 |
インプラント(左下6,7) | ¥216,000 | 2 | ¥432,000 |
GBR骨造成術(左下6,7) | ¥108,000 | 2 | ¥216,000 |
処方(ジスロマチック) | ¥5,400 | 1 | ¥5,400 |
仮歯 (右上2,1左上1,2) | ¥5,400 | 3 | ¥16,200 |
インプラント(右上4) | ¥216,000 | 1 | ¥216,000 |
処方(ジスロマチック) | ¥5,400 | 1 | ¥5,400 |
合計 | ¥901,800 |
虫歯の除去とダイレクトボンディング修復 | |||
ボンディング (左下3) | ¥21,600 | 1 | ¥21,600 |
合計 | ¥21,600 |
虫歯の除去とダイレクトボンディング修復 | |||
インプラント+メタルボンドクラウン(右上6,7) | ¥216,000 | 2 | ¥432,000 |
インプラント+メタルボンドクラウン(左下6,7) | ¥216,000 | 2 | ¥432,000 |
インプラント+メタルボンドクラウン(左下6,7) | ¥216,000 | 1 | ¥216,000 |
合計 | ¥1080,000 |
前歯の金属を除去、根管治療後にファイバーコアを築造 | |||
補綴・コア除去(右上1,3,左上2,3) | ¥21,600 | 4 | ¥86,400 |
根管治療 (右上1,3,左上2,3) | ¥81,000 | 4 | ¥324,000 |
MTA(右上1) | ¥21,600 | 1 | ¥21,600 |
ファイバーコア(右上1,3,左上2,3) | ¥21,600 | 4 | ¥86,400 |
合計 | ¥518,400 |
CTG (結合組織移植)手術 | |||
CTG (結合組織移植) | ¥108,000 | 1 | ¥108,000 |
合計 | ¥108,000 |
セラミッククラウン(単冠・連結冠)の装着造 | |||
ジルコニアセラミック(右下3-左下3) | ¥156,600 | 5 | ¥783,000 |
連結料(3歯) | ¥54,000 | 1 | ¥54,000 |
ジルコニアセラミック(右上3-左上3) | ¥156,600 | 6 | ¥939,600 |
連結料(6歯) | ¥108,000 | 1 | ¥108,000 |
ジルコニアセラミック(左上4,5,6,7) | ¥156,600 | 4 | ¥626,400 |
合計 | ¥2,511,000 |
紹介した治療内容
精密検査と無料カウンセリング
レジンによるダイレクトボンディング
インプラント
一般歯科治療
歯を抜かずに残す治療(根管治療)
審美歯科